人生100年時代を迎えた長寿大国・日本。加速度的に増える医療費を抑えるために、健康寿命の延伸、健康維持は国をあげてのテーマとなっています。中でも歯の健康維持を目的とした「予防歯科」の取り組みは、これまで治療を目的とした診療が中心だった歯科医療にとって大きな転換点となるもの。この記事では、渋谷・宮益坂の近藤歯科クリニックの近藤院長の話をまじえながら、予防歯科の考え方、健康な歯を維持するためのポイントなどを詳しく聞きました。
「治療」から「予防」へとシフト
歯科クリニックへ訪れるのは、虫歯や歯周病などの治療が目的であることがほとんどです。しかし、現在の歯科クリニックでもっとも重視されているのは「予防歯科」で、これは口腔内の状況や患者さんの年齢、ライフスタイルなどを考慮して、口腔内の健康をトータルで提案することを目的としています。
予防歯科の重要性が特に注目されるようになった背景には、65歳以上の人口が21%以上の超高齢社会が到来したことがあります。加齢に伴って口腔内の環境が悪化し、自分の歯で食事ができなくなると、QOL*が大きく低下します。また、口腔疾患は全身の基礎疾患にも影響するため、近年ますます口腔内の健康、特に高齢者の歯の維持が重要になっているのです。
厚生労働省では、高齢者において歯の喪失が10本以下であれば食生活に大きな支障を生じないとの研究に基づいて、生涯にわたって自分の歯を20本以上保つことを目標にすることを提唱しています(80歳で20本以上歯を残すことから「8020運動」ともいいます)。そのためには適切な歯磨きや、定期的な歯科検診が必要ですが、予防歯科にはそれだけでなく、噛み合わせ調整や歯列矯正、スポーツ時の歯への負担軽減といったケアも含まれます。患者一人一人の状況に合わせて、その時に必要な治療や処置を行うのが予防歯科であり、国としては従来の治療メインの歯科から、予防歯科へ大きく転換することをめざしているのです。
予防歯科とクリーニングの違い
予防歯科を歯のクリーニングのことだと考えている人も多いようですが、先述のとおり、予防歯科とは歯の健康を維持するための総合的なアプローチのこと。そのためクリーニングはあくまでその手段のひとつです。
歯科クリニックで行うクリーニングはPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれ、歯科医や歯科衛生士などの専門家によって徹底的に歯面清掃が行われます。専用の機器とフッ化物入り研磨剤を使用し、自分では落とせない歯石や磨き残しなどをクリーニングできるため、歯周病になりにくい環境へと整えることができます。PMTCは予防歯科の一環として、とても大切な役割を担っているのです。
予防歯科のメリットとデメリット
予防歯科を行うことによるメリットは、歯の健康を維持することで、高齢になっても自分の歯で食事ができるようになることです。また、歯周病が原因でさまざまな病気を引き起こすこともあるため、その予防につながります。例えば歯周病によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入ることで、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり(糖尿病)、血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)に関与することもあります。予防歯科によって歯周病を防ぐことができれば、このようなリスクも低減できるのです。
デメリットとしては、定期的に歯科クリニックに通う必要があるため、そのための時間とお金が必要になることでしょう。ただ、症状が進行してからの治療費と治療期間を考慮すると、予防歯科にコストをかけるほうが得策と言えるでしょう。一度症状が進行してしまうと、完全に元に戻すことは不可能だからです。
予防歯科の先進国スウェーデンと日本の違いとは?
キシリトールガムのイメージがある北欧諸国は、予防歯科の先進国です。なかでもスウェーデンは歯科分野においては世界を大きくリードしており、例えば80代の平均残存歯数を見ても、日本が13本であるのに対し、スウェーデンは21.1本と、約8本もの差があります。
これは1970年に国家戦略として予防歯科に大きく舵を切った結果と言われており、現在も予防歯科が国の文化として定着しているためです。スウェーデンでは、子供や青年は定期的に歯科治療を受けており、成人になってからも定期的に受診する人が多いとのこと。これには保険制度も大きく影響していて、スウェーデンの保険制度では虫歯や歯周病のない人が予防として診察を受ける段階から適応されます。
予防歯科にかかる費用や保険適用は?
基本的に現在の健康保険制度は、虫歯や歯周病を治すための最低限必要な治療費に適用されるものです。そのため、病気の治療を目的としていない予防歯科では、保険適用はされず自由診療となります。ただし、歯に悪影響を及ぼす可能性があると診断された場合は、予防だとしても保険が適用されるケースもあります。
2020年4月に行われた診療報酬改定では、以下のようにリスクに対する定期的な歯のメンテナンスが保険適用対象になり、予防歯科へのシフトが大きく前進しました。実際にどのようなメンテナンスが保険対象になるのか、また保険対象外の場合はどれくらいの費用となるのかについては、かかりつけの歯科クリニックに相談するのがよいでしょう。
- 歯科疾患の継続管理の推進
- 歯周病重症化予防治療の新設
- 口腔疾患の重症化予防
- 口腔機能低下への対応の充実
- 生活の質に配慮した歯科医療の推進
引用:厚生労働省 北海道厚生局 医療課 令和2年3月5日現在版
予防歯科はなぜ重要なのか?渋谷・宮益坂の歯科医が語る「歯科クリニックを選ぶポイント」
歯科クリニックは歯が痛くなってから通うもの、という固定観念がある方も多いと思いますが、人生100年時代を生きる私たちにとっては、歯の健康寿命は非常に重要なテーマです。
渋谷・宮益坂の近藤クリニックの近藤院長は、以前から「予防歯科」の重要性を訴えてきた医師の一人。そこで、近藤院長に予防歯科に通う際のポイントなどについて伺いました。
「予防歯科において大切なのは、その患者さんの口内環境を『いかに悪くしないか』という点です。病院というのは病気を良くすることが目的ですが、予防歯科はその点が大きく異なります。良い状態をいかにキープするかというのは、ただ虫歯がないからOKというわけではありません。小さなお子さんと80歳の方では、口内のリスクはかなり違います。年齢だけでなく、その患者さんが抱える病気や日常生活の悩み、ストレスなども口内環境に大きく影響するため、予防歯科というのは長い目でその患者さんを見ることが求められます。そのため、必ず信頼できるかかりつけ医を見つけ、継続的に通えるよう工夫することが大切です。
信頼できる医師に出会うためには、その歯科クリニックが予防歯科を重視しているかどうかがポイントになります。また、医師だけでなく、歯科衛生士等のスタッフにも患者さんの情報が共有されていることも非常に重要です。そのため近藤歯科クリニックでは、医師以外のスタッフは全員歯科衛生士で揃えており、彼らがすぐに治療できるような体制を整えています。予防歯科の内容は個人によってかなり異なるため、どれくらいのスパンで通えばいいかという一律の決まりはありませんが、目安として3か月をおすすめしています。ぜひ予防のために歯科クリニックに通うことを習慣にしてみてください。みなさんがいつまでも自分の歯で美味しく食事ができることを願っています」
谷・宮益坂の近藤歯科クリニックは、「予防歯科」を推進しています
渋⾕・⻘⼭エリアにお住まいの方、お勤めの方を中心に、多くの皆さまの⻭とお⼝の健康を⾒守り続ける近藤歯科クリニック。その大きな特長となっているのが、患者様からのご紹介、口コミで受診される方が多いこと。広告や営業活動はせずとも、開業から20年の間 “選ばれる歯科医” であり続けることに感謝を忘れず、⼀⼈ひとりの患者様に丁寧な診療を⼼がけています。予防歯科に関心のある方、ぜひ話を聞かせてください。渋谷・宮益坂でお待ちしています。